スカーレットの悪女
「実莉ぃ、なんで朝からそんなご機嫌ななめなん?」



朝食後、無言でリビングの掃除機をかける私を観察する大希は口をとがらせながらそう言った。


私は掃除機を止め、掃除機の吸い込み口を大希の顔に向けた。



「あんたがキスマつけるから好きな服着れないの!」

「え~?俺そんな目立つとこにしてへんやん。そもそも男所帯なんやから露出多い服着たらあかんって」

「うるさいおっさん」

「そのおっさんにひんひん泣かされてたのはどこの誰やろうな」

「……」



朝からダルがらみが鬼うざい。さすがの私も黙って睨みつけた。


志勇みたく目立つところにキスマつけないだけちょっとは大人なのかもしれないけど、あたたかくなってきたから今日はオフショル着るつもりだったのに。



「実莉ぃ、元々かわいい系の顔やから睨んでも効果ないで。むしろ朝からええもん見れた気分になったわ」

「いいから早く仕事行けば?」

「はいはい、お菓子買って帰るから俺が帰るまでに機嫌直してや」

「子どもじゃないんだからお菓子で機嫌直るか!」



大希はようやくソファから立ち上がり、私の頭をぽんぽん撫でて玄関に向かった。



「まったく、調子のいいやつ」



大希が出て行ったのを確認して掃除を再開する。掃除機が終わったら今日は天気いいしシーツ洗おうかな。


考え事をしていると玄関の鍵が開いた音がして、私は掃除機から手を離して玄関に向かった。
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