スカーレットの悪女
「なんであんなことしたの?」

「だって約束したじゃん、私が守るって」

「なんで昔の約束を頑なに守るの?
そんな約束……実莉が死んだら、わたしにとっては意味ないんだよ」

「……ごめんね」



壱華を守ると豪語して、いざ死に直面すると怖くてたまらなかった。


誰も傷つかないハッピーエンドを迎えられるんじゃないかってどこか期待してたから。


でも甘かった。がんじがらめの運命は、壱華と志勇を引き合わせて、次のステージに進もうとしている。


それでもこうして姉妹で手を取り合って感情を分かち合えることが何よりも嬉しくて。


人目をはばからず、2人で抱き合ってさめざめと泣いた。


志勇はそんな私たちを、腹の奥で何を考えているかさっぱり分からない、闇に包まれた漆黒の瞳で見つめていた。
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