スカーレットの悪女
「あかん寝るところやった」

「寝ていいのに」

「今寝たら夜寝れんから起きる。実莉、俺が寝んように協力して」

「協力ってどうやって?」



首を傾げて瞬きすると大希の顔が間近にあった。不意に距離を縮められたと発覚した直後、唇を奪われ同時に逃げられないよう抱きしめられた。


すんなりと大希の舌先が口内に侵入する。キスを通じての多幸感と快楽を覚えてしまった私は拒否できず受け入れて大希の背中に腕を回す。



「んうっ、ん、大希……」

「んー?いけずやな分かってるくせに。1週間も実莉に触れ合えずお預けやったなんてさすがの俺も我慢の限界」



強く抱きしめていた大希だったけど、試すように力をゆるめて上体を起こす。


しかし逃げる理性など残っているはずがない。私は大希のせいで、たかがキスひとつで欲情するほど“躾られて”いるのだから。


キスされたあの瞬間を境に立場は逆転。


私は覇王の欲を受け入れ、貪欲な虎の情欲を満たすための獲物に成った。
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