スカーレットの悪女
志勇は足音もなく近づいてくると、そっと壱華の頭に手を置いた。


そのとたん、壱華はビクッと肩を震わせて表情を強ばらせた。



「壱華、もういいだろう。お前も寝てねえんだから先に帰って休んでおけ」

「……まだ実莉と一緒にいたいです」

「壱華がここにいると、こいつも気を使う」

「そんなことないし!」

「嘘つけ、顔が真っ青だ。死にかけの空元気じゃねえか」



やっと壱華が安心できたよう見えたのに、志勇は私と壱華を引き離そうとしている。


なんのつもり?しゃべる度に腹に響いて激痛なのは確かだけどさ。


それに寝たきりで三半規管が弱ってるみたいで、なんか気持ち悪い。
< 73 / 807 >

この作品をシェア

pagetop