スカーレットの悪女
「あー、甘ったる。さぶいぼが出るわ〜」


でも私が近づいてきたんだから少しはこっちに注目してよね。わざと関西弁で注意を引くと、2人は同時に振り返った。



「お前の関西弁ムカつくな」

「ふふ、実莉の関西弁かわいい」



正反対の意見を述べた壱華と志勇。壱華は相変わらず女神様だけど、志勇の性格のひねくれようも変わらず。

思わず志勇の顔を見てため息をついた。その時だった。



「あ、志勇様よ!」

「きゃあ、出席なさってるのね!」



会場の出入口付近から若い女の騒ぐ声が聞こえる。目を向けると、今日の出席リストには乗っていないはずの荒瀬組系の組長の娘たちだった。


この女たちは以前、初詣に乱入した挙句壱華を攻撃しようとして私が撃退したおつむが残念なお嬢たちだ。


その証拠に組長の娘という弱い立場でありながら身分を弁えず、まだ志勇がどうのこうのと大きな声で騒いでいる。


志勇は目線だけそっちに向けて、その後鼻で笑い私を見た。



「おいマタタビ、あれ鎮めて来いよ。キンキン耳に響いて子どもにも悪影響だ」

「えー、私を便利屋扱いしないでくれる?」

「壱華のためだぞ」

「“めんどくさいからお前が処理しろ”って顔に書いてあるから行かなーい」

「生意気さは健在だな、むしろ悪化してんじゃねえか?」

「あんただけには言われたくないわ」


また私のことをマタタビなんて呼ぶ志勇にこれでとかと生意気な態度で接する。

壱華はそんな私を見て「懐かしい」、そう呟き微笑ましく見守っていた。
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