スカーレットの悪女
「壱華、何かあったらすぐ呼べ。あと、1人にはなるなよ」

「分かってる。みんないるから大丈夫よ」



それから1時間後、パーティーの途中ではあるけれど幹部が集まる貴重な機会でもあるため、組長や若頭含む最高幹部たちが会議に出席することになった。


私はすかさず壱華の腕に抱きついて志勇にアピールした。



「じゃあね志勇、私は壱華とふたりっきりで楽しむから

「ムカつく顔しやがって。望月に似てきたな」

「おおきに、褒め言葉として受け取っておきますー」

「チッ、関西弁やめろムカつく」



志勇は最後まで私に悪態をついてその場を離れた。

ふと壱華の方を見ると片手でお腹をさすっている。



「壱華、大丈夫?緊張してお腹張ったりしてない?」

「ううん、今動いた気がしたの」

「それならよかった。でも疲れたら遠慮なく言ってね。志勇がいない今、私が全力で壱華を守るから」



胎動が感じられるほど大きくなった壱華のお腹。細い手足に対してアンバランスで苦しそうに見えてしまう。


実際はそんなことないんだろうけど、私は壱華に対しては心配症だから。


そのために2週間前に一度荒瀬を訪れて案を練ったのだ。私は目線の先にいる理叶と光冴に目配せをし、それから壱華に笑いかけた。



「だから……心配しなくていいんだよ」

「……えっ」



私の笑みに対して壱華が疑問を抱いたその時、突然会場は暗転した。
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