スカーレットの悪女
自分の意思で会場を抜け出したのではない。現在私は頭に袋のようなものを被せられ、何者かに担がれて移動している。


視界が真っ暗だし振動が頭に響いて気持ち悪いけど、待ち受けるこの先に成敗しなければならない悪人が待ち構えている。


数分間移動すると、会場付近の一時的に停電が復旧したようで袋を被せられたままでも明るくなったのを感じた。



「遅いわよ、会場の明かりが戻るまでギリギリじゃない。誰かに見られたらどうするの」

「やっとお話出来るわね、“帝王の女神”」



それと同時に冷たい床の上に下ろされ、頭上から女の声がする。


やはり原作通り、この女たちは壱華の命を奪おうと画策していたか。


原作で壱華はこの声の主、先ほど文句垂れていた荒瀬の幹部組長の娘たちに逆恨みをされ、この場に連れ去られ惨い暴力を受け、心身ともに消えない傷を受ける。



「さあ、その怯えた顔を見せなさい……えっ」



だがしかし、この私がいるからにはそうはさせない。


頭を覆っていた袋を外すと、残念ながら現れたのは妹の実莉。


女たちは目を丸くして驚愕の表情。壱華と同色のドレスと髪型を似せていただけで勘違いしてくれたらしい。


うろたえる2人は実に滑稽だった。



「なんで!?壱華じゃないじゃない!」

「あんたたちしくじったわね!」



女は私をここまで連れてきたそれぞれの護衛係に食ってかかる。


しかし私の後ろに立つ男たちはしくじったのではない。私が事前に買収したのだ。
< 735 / 807 >

この作品をシェア

pagetop