スカーレットの悪女
2週間前荒瀬に来たのは、すべてこの時のため。壱華を脅威から遠ざけるために私は影で暗躍していたのだ。


ちなみにそれぞれのお嬢の護衛たちは、彼女たちの目論見を阻止すれば荒瀬組本部組員として招き入れると誘い出した。結果、本来の主である彼女たちをいとも簡単に裏切ったようだ。



「壱華じゃないと意味が無いのに……!」

「壱華?壱華をどうするつもりだったの?」



しかしただ壱華を危険から遠ざけただけでは甘い。


壱華に近づく脅威は完膚なきまでに叩き潰さねば。



「決まってるでしょ、この場で壱華を始末してやろうと思ったの。あんな女、志勇さまにふさわしくない!」

「荒瀬紘香と同じように階段から突き落として流産させてやるつもりだったのに!」



私が怯えた素振りを見せるとペラペラと計画を喋り出すふたり。


2人ともおつむが残念というか、呆れ返るほど自己中だけど言質を取らないといけない。


女たちはヤケになったようですべて語ってくれた。


実は現組長の妻である荒瀬紘香は志勇を産む前に子どもを妊娠していたが、女どもから恨みを買い、階段から突き落とされて流産してしまったこと。


そして護衛が手薄なパーティーの日に、同じように壱華を痛めつけるつもりであったこと。


私は終始怯えた様子でそれを聞いていたけれど、ある程度証拠が集まったから取り繕うのはやめた。


私は不意に立ち上がり、女たちに顔を近づけて満面の笑みを見せつけた。



「ふふっ、親切に洗いざらいぜーんぶ吐いてくれてありがとう」



さあ、ここからは本物の悪女が裁きを下す時間だ。
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