スカーレットの悪女
「なんなのよあんた!なんで邪魔するの!?」

「壱華がダメなら、あんたを傷つけることだってできるんだからね!」



憤慨する彼女たちの幼稚さに呆れを通り越して笑えた。


私に手を出したこと。その意味を理解していないらしい。



「ふーん、“覇王の花嫁”を攫ってさらに傷つけようとするなんて、そんなに死に急ぎたいの?」



自分で花嫁と名乗るなんて小っ恥ずかしいけど、今の私にはこの異名がある。


私はもう、ただの主人公の妹ではない。西雲という大きな後ろ盾を得た悪女なのだ。


赤かったふたつの顔は、緊張と焦りでみるみる白くなっていった。



「あっは、ようやく分かった?壱華じゃなくても、私を誘拐した時点であんたらは詰みなの」



大希の笑い方を真似すると、彼女たちはビクッと肩を震わせた。



「良くも悪くも極道は縦社会。不祥事が起きれば責任を取るのは上の仕事。だからその前にあんたらみたいなお荷物、荒瀬は組ごと捨てるよ」



最初から負けていた彼女たちに勝ち目は無い。歪んだ笑みに低い声で脅し、チェックメイトを言い渡した。
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