スカーレットの悪女
side 志勇


つくづくこの決起集会には疑念を抱いていた。


なぜ壱華の披露目などと称して規制もなく人を集めたのか。


特に壱華に対して敵意を持つ女どもが会場に入ってきた時点で怪しいと思っていた。


会議中に停電してその不安が的中していることを悟った。復旧した後、クソ親父に問いかけると「直接利用しようなんて思ってねえさ。ただ、奴らにその機会を与えただけに過ぎない」などと抜かしたため、壱華を囮にに邪魔な組織に破門させるための集会であるという事が判明した。


壱華が危ない。俺は急いで壱華がいるホールに向けて走り出した。



「壱華!」

「……志勇」



ところが壱華は無事だった。どういうことだ。あの女どもの計画は失敗したのか。



「私は無事だから大丈夫。でも実莉が」

「実莉が?」



壱華は無事だが、暗転した間になぜか実莉が攫われたらしい。そしてその直後潮崎のガキもいなくなったと。


不可解な結果に眉をひそめると、光冴が俺に近づいてきた。その表情に負の感情は含まれていなかった。



「大丈夫、実莉がただじゃ転ばない女だって、若もご存知でしょう」



その言葉を受け、俺はため息をついた。どうやら俺は出し抜かれたようだ。


いつかのようにどこで嗅ぎつけたのか情報を手に入れ、今回もあいつが内々で処理をしたのだろう。だから最近ちょくちょく帰ってきていたのか。



「なるほどな、すべてあいつの計画のうちか。案内しろ」


弩級のシスコンめ、壱華を護るのは自分の使命だとでも思っているのか。などと咎めるのは後にして、事の顛末を知るのが先だ。


俺は光冴の後に続いて実莉たちがいるという別室のホールに向かった。
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