スカーレットの悪女
「私はもう、ただの壱華の妹じゃないの。バックに西雲がいる。自分に価値があるうちに、利用できるものはとことん利用しなきゃ」



冷徹とも捉えられるが、行動の原点は“壱華を守る”という原点に固執している。


知れば知るほど不可思議な人間。そいつに惚れたのがもっと理解不能な男だというのだから、ある意味惹かれ合う運命だったのかもしれねえ。


にしても、自分に価値があるうちに、か。


最近の様子だと望月の場合、実莉を手放しそうな気配がないが。


まあ、これを本人に言っても理解しようとはしないだろう。



「……実莉が壱華の敵だったらと思うとゾッとする。父親が亡くなった後、お前だけは壱華の味方でいてくれてよかった」



冗談交じりに別の話題を出すと、実莉はなぜか表情を曇らせた。



「そうなったら壱華は孤立してただろうね。まるで継母と義姉妹に虐げられるシンデレラみたいに」



遠い目をしてここではないどこかを見つめる。


時折こうして見透かしたような大人びた発言をするものだから調子が狂う。


俺は実莉に近づき、両頬をつまんで無理やり口角を吊り上げた。



「にゃにしてんの?」

「お前は笑ってろ」



俺からふざけた態度を取ると、実莉は少し困ったように、それでも朗らかな笑みを見せた。
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