スカーレットの悪女
「んふふ、豊作~」


今日は百貨店でやってるスイーツフェアに行きたかったらしい。実莉は大量のお土産を両手いっぱいに提げて本家の門をくぐった。


ちっさい体でよう食べるんよな。その割に体は細い。たぶん栄養が全部胸に行ってんやろ、知らんけど。



「そんな食べ切れるん?」

「半分はお父さんと雫佳さんにあげるよ。あとは雅さんに餌付けする」

「ちょい待て誰やお父さんって。親父のことか?その法則で行くと必然的に俺のことダーリンって呼ばなあかんやろ」



まだ実莉を敵対視する雅と仲良くなるためにあいつの好物を買うのはわかる。


けどなんで俺の両親にまで買うんや。しかも「お父さん」ってなんや。



「ダーリンって呼び方古くない?なんか昭和っぽい」

「しゃーないやろ俺は昔っから昭和の頑固親父に囲まれてんねん!」

「ふふ、呼び方ひとつで必死になって変なの」



まだ追求してやろうと思っとったけど、楽しそうな笑顔を見せられたら何も言えん。


帰ってきてやっと笑ってくれたわ。たぶん使命感から来る緊張で自分らしく振る舞えてなかったんやろな。


それほどまでに壱華を守ることが実莉にとって重要なんやな。



「実莉ってさあ……」



どうあがいても今の俺じゃ実莉の一番にはなれん。わかってるからこそ賭けてみることにした。
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