スカーレットの悪女
「まだ壱華に勝てんか〜なんでやねん」



俺の思惑はさておき、実莉の手荷物を引き受けて紙袋を両手に持ったままリビングに入った。



「半ば強引に連れてきたからでしょう。何を分かりきったことを言ってはるんです」



すると信じられない光景が目の前に広がる。


リビングのソファに腰かけ、ティーカップ片手に優雅にくつろぐ男がひとり。


親父かと思ったら赤星やん。そんで俺の独り言に対していつも厳しいのなんなん。


つーかなんでおるんやお前。



「俺の部下が辛辣過ぎる」



驚いて感想とツッコミを間違えた。なんで勝手に俺の家に入って紅茶飲んでんねん。


しかもそれ実莉のために買うたええ茶葉の紅茶やんけ。


ほんまこの男頭おかしいわ。そして自由人にもほどがある。勝手に家入られて怒らん俺も俺やけど。


「辛辣?今に始まった話やない」

「確かにそうやな……いやちゃうねん、無断で上司の家に侵入するとかなんなん」

「浮かれポンチの大希に注目してもらうにはこの方法しか思いつきませんでした」



腐っても若頭に対して浮かれポンチとか喧嘩売ってるやろこいつ。


こういう時だけ、荒瀬志勇の右腕の弟は従順そうでええなあと思う。


隣の芝生は青いって言うけど、こんな生意気な右腕赤星くらいやろ。
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