スカーレットの悪女
「なんやねんこんな夜中に。実莉とイチャイチャしたかったんに」

「あんな色気のない女のどこが気に入ってはるんです?」



部屋に足を踏み入れるた、奥の方から低い男の声が聞こえた。誰やと思ったら雅やないかい。


いつもと声音が違うからびっくりして一瞬足を止めてしもうたわ。


なるほどねえ、やっと状況が把握できた。


一蹴すればいいだけの難癖を対処できず、こんだけよじれた原因は雅か。


俺が大好きな雅のことやから「大希さんと話すまで取り下げません」とでも言ったんやろ。


そしてまだ実莉のこと認めてへんの?ま、最後の足掻きってとこやろうな。はよ認めた方が人生楽しいやろ。



「はー?分かってへんな、実莉は沼や、沼」

「……沼?」

「ただのお嬢ちゃんと思って近づいたらしてやられたわ。今じゃもうズブズブ。
あーんな可愛い顔してんのに強かでたくましいからそのギャップがええねん」



ガハハと笑うと、雅率いる天音組の重鎮は俺の軽い態度に眉根を寄せる。


なるほど、天音はやはり実莉のことをよく思ってへんか。



「そんなことよりはよ終わらせて、寝床に実莉待たせてるから」

「そうはいきませんよ。今日こそ答えを出してもらわんと」

「俺が出席しなかったことがなによりの答えやろ」



たぶん、雅としては今回の議題なんてどうでもいいんやろうけど、天音組自体が俺の行動にいちゃもんつけたいらしい。


雅は反乱分子を炙り出す意味で、天音の味方でいる体なんやろうな。



「ええですか大希さん、耳にタコができるくらい聞いたでしょうけど、天音のオヤジが俺を頭に据えることを許容したから、自分の孫と大希さんを結婚させろって言ってはるんですよ」



にしてもほんましょーもない。俺の親父、西雲の統帥に盾つき、1週間も拗れた原因がコレ。


どうも天音の組長の孫が俺に惚れ込んでるから、実莉やなくて自分と結婚させろって言い出したらしい。


そんで天音の組長もノリノリで我が孫を若頭の嫁候補に、と勝手に名乗りを上げたらしい。


なんちゅーわがままや。俺らは裏切った天音をお咎めなしで受け入れてやったっていうのに。
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