スカーレットの悪女
「実莉、お待たせ」



よし、30分以内に帰って来れたわ。けどどうやろ、寝付きのいい実莉のことやからもう寝てる気がする。


わざと起こすために廊下の明かりを付けて寝室のドアを開ける。すると光が顔にかかり、実莉は顔をしかめて「んん……」と掠れた声を出した。



「……案外早かった」



廊下の電気を消して部屋の中に入ると、実莉がぼそりと呟いた。ふて寝するとか言ってたくせに起きとったらしい。そういう健気なとこ好きやわ。



「せやろ?秒で終わらせてきたわ」

「おつかれ……もう寝る?」

「まだ寝えへんよ、ええところで中断してごめんな」



服を脱いでベッドに膝を着く。スプリングがギシ、と鳴って実莉は両腕を広げた。



「じゃあ、早く、ちょうだい」

「今日の実莉は素直やんな」

「いっぱい焦らされたもん」

「ごめんなあ、焦らしたらかわええ反応するもんやから」



実莉もずいぶん自分の欲に素直になったもんやな。そう育てたのは俺やけど、こういう時だけ甘えられるのは悪くない。
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