スカーレットの悪女
「実莉、俺のこと呼んで」

「大希……」



闇に響く実莉の甘い声。甘い声で名を呼ばせれば、懸命に俺の体にしがみつく。


酔ってもへんのに不思議な酩酊感がある。あかん、変なこと口走りそう。



「俺のこと好き?」

「っ、すき……好き」



キスをしながら普段聞かないようなことを問いかけると、実莉はちゃんと俺の目を見て想いを口にした。


初めてちゃんと好きって言われた気がする。



「実莉、今初めて好きって……って寝てるやん!」



感情を整理しようとしばらく覆い被さるように抱きついてた数分の間に、実莉は完全に意識を手放してすやすや寝とる。


道理でいつも抱きついてたら重いとか文句言うくせに大人しいなあとは思ったけど。



「実莉、風呂は?」

「んー……」

「ありゃ、もうおねむか。明日一緒に朝風呂する?」

「うん……」

「言質とったからな」



ほぼ寝言みたいな相槌を打つ実莉。正直に言うまだ足りひんけど、こんな気持ちよさそうに寝てんのに叩き起すのは良心が痛い。


ま、精神的には大満足や。俺は実莉の寝顔を見つめながら笑い、その後抱き枕みたいにしっかり抱きかかえて寝た。
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