スカーレットの悪女
「それで、肝心のお悩みは?」



そいつに気がそれた一瞬の隙で話しかけてきた赤星。まあ話聞いてもらえるならなんでもええわ。



「いつになったら実莉から好きって言ってもらえるんかな」



こんなこと言ったらまた馬鹿にされるんやろ。


ふてくされたように睨みつけると赤星は珍しく驚いたように眉を上げ俺と顔を会わせた。



「おや、知らないんですか」

「何がぁ?」

「実莉さんは大希が寝ている時に、顔を見ながらでもなるべく照れずに好きと言えるよう、練習しているらしいです」



好きって伝える練習をしてる?なんやそれ、想像しただけでかわいい。



「なんでお前がそれを知ってるん」

「この前大希を叩き起こすために家に行ったら出くわしまして。内緒にしてほしいと言われましたがそんなに悩んでるのなら伝えて上げたほうがいいかと」



赤星が俺の機嫌を取るためにしょうもない嘘をつく男じゃないってのは知っとる。


つまり実莉はほんまは俺のこと大好きってことやん!



「なんやそれ……実莉……実莉ぃ!」



俺は赤星を置いて走り出し、玄関のドアを勢いよく開けて寝室に向かった。



「なんや実莉、いけずやな!直接言ってくれてもええんやで!?」



実莉はぐっすり寝ていたところを俺に揺さぶられて起こされ、顔をしかめる。



「なあ実莉、今度から俺が起きとる時に言ってな、なあ?」

「んん……口が臭い……」

「え……」



顔を近づけて興奮気味に話しかけると、実莉は一瞬威嚇するチワワみたいに嫌悪感を全面に出した顔をして、それから布団をかぶって再び眠りについた。



「ふふ……ブハッ!」



たぶん飲んだくれて臭いんやろうけど、面と向かって言われるとさすがにショックを受ける。


そして赤星、いつの間にここまでついて来たんや。俺の後ろで肩を震わせて笑うんやない!
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