スカーレットの悪女
side 雅


俺の人生は大希さんを中心に回っとる。天音のクソジジイに裏切られたところを拾ってくれて、俺の居場所を作ってくれた大恩人。


漢らしくてかっこよくてカリスマ性があって器がでかい。


憧れてやまない大希さん。せやけど、大希さんが選んだ女はやっぱり気に食わん。



「実莉、ほら言いたいことがあったら言っていいんやで。すで始まってきで終わる言葉は?」

「すきやき」

「なんでそうなるん!1日に一回くらいは好きって言ってや!」



意地っ張りでちんちくりんで生意気なクソガキ。今日だって大希さんの求めに対して不真面目に対応してるし。


俺やったら毎日100回以上好きって伝えるわ。


今日は俺と大希さんと丞さん、そして実莉が昼から応接間に集まっていた。けど大希さんは相変わらず実莉とばっかり接するからええ加減こっち見てほしい。



「求められると言いたくなくなる。ていうか、私はこうやってダル絡みされたくないから大希にバレないようにしてたの」

「ダル絡みって言い方ひどすぎやろ。なあ雅どう思う?」



その願いが届いたのか、やっと俺の方を見てくれたから胸を張った。



「俺は大希さんのこと大好きです」

「素直やな雅ぃ、実莉にもその素直さ分けてやってや」

「へえ、素直になれへんとかダサっ。反抗期のガキみたいに意地張って見苦しいわ、はよ大希さんに嫌われたらええねん」

「雅さんって私に小言いう時生き生きしてるよね」



俺に会話の主導権が握られたから、かすかな希望を持って実莉を罵倒しても笑って受け流される。


かすかな希望ってのは、負の感情を出して人間らしい部分を見せるかってとこ。


ムカつく、なんでここまで嫌われてるって分かってるのに平気なツラしてんねん。しかも小言どころじゃないねんがっつり悪口なんよ。


図太すぎるやろ。それとも感情が一部抜け落ちてんとちゃうか。
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