スカーレットの悪女
「チッ、おもんないわつまらん」

「雅、自分こそまだ実莉に反抗期なん?」

「二人だと一緒にごはん食べてくれるしまあまあ話せるけど、大希が間に入ってくるとこうなの」

「なんで俺がおるとこうなるん」



しかも勘違いしてるし。お前と二人きりの時話すのは探りを入れてるだけや。


いくら通ってもメッキが剥がれんから手料理が好きと勘違いされて餌付けされてる。確かに飯はうまいねん、そこは認める。


けどこいつを「姐さん」と呼ぶには抵抗がありすぎる。



「そんなことより大希さん、ぼちぼち来るみたいですけど」



この会話は不毛やからこの辺で切り上げよ。今日こうして集まったのはいちゃもんつけるためやない。



「よし、見せつけたろ」

「絶対逆効果と思う……」



大希さんは笑顔になって実莉の肩を抱いたけど、実莉は苦笑い。なぜならこの後修羅場になることが確定だからだ。


しばらくして部屋の外が騒がしくなった。男ばかりの本家に珍しく女の声。


その浮ついたような黄色い声はだんだん近づいてきて、そして勢いよく応接間の扉が開いた。



「大希さ~ん!お久しぶりですう」



長い黒髪の、見た目だけはいい女。そいつはろくに挨拶もせず大希さんに抱きつこうとしよった。


アホすぎる、以前は許されても、今は若頭相手に馴れ馴れしく立場ではないってことを理解してないらしい。


すかさず丞さんが割って入り、女は不満げに頬を膨らませた。



「え~なんで?前は抱きついても何も言わなかったやん」



うーん、ぶりっ子する性悪女がキモい。サブイボ立つわ。


この女は俺のいとこで組長の孫娘。俺と違って溺愛されてきた方の孫で、自分は西雲で一番権力のあるお嬢だと勘違いしている。


実際そうやったけど、一度西雲を抜けて寝返った奴らにそれほどの力があるはずがない。


よって大希さんに直接会うことすら叶わないはずやったけど、今回は大希さんの特別なはからいでサプライズを用意している。
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