スカーレットの悪女
「なんで、わざわざ私をここに呼んでそれを?」



実莉は口を開きかけたけど、いとこが先に声を発した。理解が追いついてないらしい。



「直接言った方がこじれんからええかなって」

「え……もうそこまで話進んでたん?」



つくろった見かけがだんだん崩れてくる。俺を見て睨む顔はすでに般若の形相やった。


はあ、なんで俺につっかかってくんねん。めんどい。



「ねえ、知らなかったんやけど雅!」

「俺も今知ってん」

「抜かせ、絶対聞いてたやろ。こんなん……辱めに遭わせるために呼んだんや!」



ずかずかと俺の前に来たそいつは、俺の胸ぐらを掴んでついにぶりっ子が崩壊。自己中な気質と関西らしい気の強さが相まってうんざりする厚かましさ。


胸ぐら掴んできたけど、辱めとかそのお花畑な脳みそでようそんな難しい言葉知ってんな、くらいしか思わへんかった。



「おい、雅に八つ当たりはちゃうやろ」



天音の本拠地なら日常茶飯事な光景やけど、ここは覇王の牙城。


彼の側近に粗暴な振る舞いをするということはつまり覇王に喧嘩を売ったのと同じ。


いとこは低くうなる虎の咆哮に驚いて手を離した。


こんなんでビビる女が姐さんになんてなれるはずないやん。


実莉を見てみ、泰然自若が過ぎてもはや眠そうな顔しとる。いや呆れてんのかあれは。


どっちでもええけど肝据わってるわ。ほんまふてぶてしい。
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