スカーレットの悪女
「雅はお前のいとこである前に俺の大事な部下やねん。その手下ろせや」

「なんなんその言い方、私に……この私にそんなことしていいと思ってるん?」



いとこは負けじと胸を張ったけど、ついに大希さんは吹き出して笑った。話にならんくて笑いが出たんやろな。



「なんか勘違いしてるみたいやけど、自分と結婚してもメリットがないねん。ヤクザは損得勘定が大事やから、天音に価値がなければ結婚まで繋がらんのよ、分かった?」

「……もう知らん!」



その笑みを貼り付けたまま、大希さんは幼子に語りかけるようにゆっくりと丁寧に説明する。


ようやく自分が馬鹿にされとることに気がついた憐れな女は、顔を真っ赤にした後実莉を睨みつけて踵を返した。


実莉は表情を一切変えずノーダメージな様子で彼女を目で追っていた。



「ねえ大希、初耳なんだけど」



あの女が入って来てからずっと開けっ放しの襖。


いとこの姿が見えなくなると、実莉は大希さんの服の裾を引っ張った。



「うん、外堀から埋めたろと思って実莉には一番最後に伝えた」

「外堀ぃ?ってことはまさか……」

「まさかのまさか。壱華にはもう連絡しとるよ」

「なんてこと……」



やっぱ大希さん、実莉にいつ頃籍入れるか言ってなかったんかい。

しかも本人に一番最後に伝えるとかあんたも策士やな。
そしたら実莉は絶対断られんやん。


しかも大好きな姉ちゃん巻き込まれたらもう終わりやな。



実莉はよろけて丞さんの方によろめく。丞さんは無表情のまま肩を支えてやって、それから大希に押し返した。
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