スカーレットの悪女
「な、分かるやろ雅、あの二面性がええねん。絶対やらんけど」



実莉は見えなくなると大希さんはさっきの胡散臭い笑顔を浮かべる。


俺を恋敵認定しはじめとる。あかん誤解を解かんと。



「さっきのは色気皆無の実莉があんな顔するから珍しいと思ったんです。で、大希さんは追いかけんでええんですか」

「追いかけて慰めなあかんほど実莉は弱い女やないわ」



俺を敵視したことは半分冗談やから心配無用として、大希さんにある種の恐怖を覚えたのは間違いない。


恋は盲目っていうけど、大希さんの執着は異常や。


そのスタンスを貫くんやったら実莉は自由に行動できひんくなるな。


近い将来、いやもうすでに、相川実莉は若頭の弱みとして周知されてしまう。


大希さんの側近として長年仕えてきたのに、今回ばかりは何を考えてるか分からん。


自分の弱みをひけらかしてどうすんねん。



「カシラ、迎えに参りました」



腕を組んで考え事をしとったから、部屋の前に立っとる男を声に気が付かんかった。


声に顔を上げるとそこには俺の部下、天音の若頭補佐が控えめに俺を呼んでいた。
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