スカーレットの悪女
俺は腕組みを解き、姿勢を正して大希さんに挨拶をしてその場を離れることにした。



「失礼いたします」

「もう行くん?さっきの嬢ちゃん、かなりご立腹みたいやから気ぃ付けてや」

「ヒステリックないとこがご迷惑おかけしました。大希さんがいっちゃん嫌いなタイプの女やのに」

「かまへん、あの女のおかげで実莉が俺と壱華を天秤にかけるくらい気持ちが偏ってきたのも分かったし。ほなまたな」



粗相をしたあの女は一応親族やから謝ったけどほんまになんも気にしてへん様子。


大希さんはああいうヒステリックな女が昔から生理的に無理らしい。それは幼少期のトラウマに起因するからなんやろうと、俺は勝手にそう結論づけとる。


俺の幼少期の傷が孤独に苛まれた凍傷とすれば、大希さんは醜い人の争いごとに揉まれ負った裂傷。


傷の数や深さも違うから、後者の方が治りが遅いに決まっとる。


それでも己を失わず、覇王として裏社会に君臨する姿はしびれるほどかっこいい。永遠に俺の憧れや。
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