スカーレットの悪女
「あんたなんて、大希さんがおらんかったら何もできんくせに」



息付く暇もないくらい早口やったけど、最後の言葉だけ聞き取れた。


そこだけ決め台詞みたいにゆっくり言い放ったってことは、言いたいこと全部言い切ったんやろうな。



「はよ去ねや、クソガキが」



おっと最後やなかったらしい。極めつけはすれ違いざまに肩パンをしてどすどす足音を響かせながら玄関の方に向かった。


実莉は大きくよろめいて、その後肩を押さえながら女が向かっていった方向に振り返って立ち止まった。


おーおー、女は怖いなあ。俺はほくそ笑みながらゆっくり実莉に近づいた。


さて、悪態つかれてどないな顔してんやろ。


取り繕った明るさに潜む湿り気をようやく見せるんやろか。


ここからでは顔が確認できんから、一歩ずつ近づいて顔を確認する。


ずっと動かんけどもしかして泣いてるん?思わず覗きこんで俺は絶句した。


全然動かんと思ったら、背中を向ける女に対しておもくそ変顔しよる。


睨みつけるとかあっかんべーとかやなくて、白目剥いたガチの変顔。


なんやその人をコケにするラクダみたいな顔。さっきの儚げな美少女はどこいったん。


なんなん、意味がわからん。


マジでなんこいつ……おもろいやん!
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