スカーレットの悪女
「第一発見者は俺やった。自分の家やなくて、当てつけみたいに幹奈の部屋で首吊って死んどった」

「当てつけって……」

「母親に嫌気が差してその頃は毎日幹奈と過ごしてたから、それが気に食わんかったんかもしれん。せやったらちゃんと子どもの世話せえって話やけど」



利己的な母親は最期まで身勝手な理由で大希を翻弄したのか。


たった7歳の子どもに背負わせるには酷すぎる。



「……まだ、その時の光景が夢に出たりする?」



それがきっかけで大希は不眠症になったのではないのだろうか。心配して問いかけると大希は平然とした顔で首を横に振った。



「実莉には言えんけどもっとえぐいの見てきたから、首吊りくらいじゃ夢には出えへん。20年も経てばどんな楽しい記憶でもだいぶ風化するし。
それより夏やったから死臭って言うんかな、臭いの記憶の方が鮮明でその他はあんまり覚えとらん」



覚えていないならそれに越したことはない。


その発言が本当かどうかは疑わしいところだけど、普段の大希の様子を見ていてもうなされている所なんてみたことないから信じることにした。


極道の若頭だもの、世間一般の過酷もなんなく乗り越えるタマじゃないとこの世界ではやっていけないだろう。
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