スカーレットの悪女
「で、まあその後はお察しの通り。杏奈は自殺したのに俺と親父のせいで死んだんやって事情も知らん大人たちに責められるわ、杏奈が死んだなら今度は幹奈を嫁にしたらええやんなんて勝手に決めるから幹奈は逃げ出すわ、いやあしんどかったわ」



その大希ですらしんどいと振り返るのだから、幹奈がいなくなった後の人生は空虚なものだったのだろう。



「けどじいちゃんは……先代の統帥は俺ら親子のこと買ってくれてたんよ。
せやからわーわー言う奴らを黙らせようと思って親父と養子縁組して収めようとしたんやけど、悪手やったみたいで今度は天音が組織を抜けたやろ?ほんま散々やった」



他人から見れば悲惨と捉えられる過去。


だけど大希はまるで達成感を得たように笑っていた。


ここで笑えるのが覇王の強さ。
やっぱりこの男、私以上に神経図太いわ。



「ま、俺は逆境でこそ輝くタイプやからここまで成り上がったけど。
見事な逆転人生やと思うで。ガキの時俺のこと舐めとった大人も今じゃ俺の顔色見て従うし。あっは、ええ気分やわ~」



衝撃の生い立ちから一転、なんと自慢話になってしまった。


情緒不安定かと思ったけど顔見れば分かる。大希は自分の人生に後悔していないのだ。


耐え忍びながら生き抜いて登りつめた頂きで今を精一杯楽しんでいる。


不幸の累積を邁進力に昇華させ、自分を信じて成功に導いたのだ。



道理で自己プロデュース能力が高いと思った。大希の揺るぎない自信は経験から成るものだったんだ。



私はそういうところに惹かれたんだ。大希の過去を聞いて妙に納得できた。
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