スカーレットの悪女
「実莉がおらんかったら俺、一生独り身やったと思う」

「まだ結婚してないから独り身でしょ」

「せやな、はよ結婚しような」



笑う大希の顔が幸せそうで私はちょっとだけ泣きそうになった。どれほどの苦難を乗り越えて今こうして笑えるようになったんだろう。



「大希は今、幸せ?」

「幸せ、あとは実莉と結婚できたら完璧」



迷うことなく幸せと答えた大希の眼差しから目を逸らしてしまった。


私には後ろめたい気持ちがあるからだ。


大希と結婚したら、ますます荒瀬に帰ることは難しくなるだろう。


壱華を守る。その使命を胸に生きてきた私には、まだ大希と一生を添い遂げる覚悟が備わっていないのだ。



「……やっぱり壱華には敵わんか」



大希もそれは分かっている。分かっている上で私を選んで、包み隠すことなく自分の過去を教えてくれた。


だから私も誠実に向き合わないといけないのに、踏ん切りがつかずに大希と目が合わせられない。


すると大希は腕を伸ばし、私の手を包み込むように握った。優しい手つきだった。
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