スカーレットの悪女
この状況をどう切り抜けるのか、周りの男たちはそれを観察しているのだ。


私に西雲の姐としての資格があるのか見定めようというのか。



「開けろ!なんしてんねん!」



女が激しく車のドアを叩くとさすがにドアは開いた。そして私を押し込もうと背中を強く押してくる。


この状況で車の中に待機している男たちが何も手伝わなくても違和感を覚えないなんてかなり鈍感らしい。



「入れ!何を一丁前に抵抗してん」



不意に背中を叩かれ息が止まる。


それと同時に、なぜこんな女に好き勝手させているのだろうと疑問とともに怒りがふつふつと湧き上がってきた。


体を反転させて女と向き合う。そして間髪入れず口の中に溜まった血を、思い切り女の顔めがけて吹き出した。



「っ、汚ったない!信じられへん!」



たまらず顔を背けて喚く女。自分の顔を拭うため私の腕を掴んでいた手が離れた。


すかさず女に勢いをつけて抱きつき、肩に噛みついた。たまらず悲鳴を上げて倒れ込む女。


予想通り、こんな状況になっても車内にいる男は誰一人として私たちに手を貸さなかった。


実莉として生を受けて17年、紛いなりにも懸命に模索して、壱華をハッピーエンドへ導くことができた。


だけど運だけで掴み取った結末じゃない、自分で切り開いてきたんだ。


闇色のシンデレラの悲劇を書き換えた“スカーレットの悪女”が、こんな女に負けてたまるか。
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