スカーレットの悪女
「実莉の頬引っ叩いたやろ、見てみあんな真っ赤になって。傷痕残ったらどうしてくれんねん」



髪を掴んだまま頭を揺さぶり、私のいる方向を指さして低い声で怒りを露わにする。


女は痛いと喚いて涙を流す。可哀想な光景ではあるけどなんとも思わなかった。悪いのはまんまとおびき寄せられたあんただし。


大希が戻ってくるタイミングも出来すぎていた。


どういう意図なのかはさておき、この一連の騒動は覇王の策略の一環なのだろうと推測した。



「はあ、胸糞悪いわ。なんで俺の実莉が傷つけられてんのに自分が泣いてるん。被害者ヅラも大概にせえや」



私が傷つけられたって、計画のうちなんじゃないの?


やり口に既視感があると思ったら、私が阻止した荒瀬の計画にそっくりだし。


確かにこの件をきっかけに難癖つければ、この女の祖父である組長も追い出せるかもしれない。


あのふたりが現在の天音にとってのガンなら、追い出す手口としては私が一番利用しやすいし。
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