スカーレットの悪女
「天音も、“新体制になること”をあれだけ渋ってたけど実莉が姐になるならと承諾した。実莉はおもろいから未来を託したくなる気持ちよう分かるわ。
おかげて西雲は好転してんねん。どれだけ重要な存在か、分かってへんのはお前らだけ」


新体制という言葉に女の身内──天男の組長は目の色を変えたけど、決着をもうついていることに変わりはない。

しかし肝心なのは覇王からの勅令。背後に控える側近2人はそれを今か今かと待ち構えていた。



「クソアマ、はよ去ねや」



そうして無表情にとどめの言葉を吐き捨てた。それは以前、その女に吐き捨てられた発言によく似ていた。


クソガキはよ去ねや、だっけ。たぶん雅が一部始終を見てたから大希に報告したんだろう。


同じような言葉でも大希が使うと一層凄みが増す。大希は絶対私に対してそんな態度取らないけど、万が一直面したら私でも泣いちゃうかもしれない。


暴君でありながら策士で隙がない。こんな男、誰も逆えない。


改めて、私はなんて危険な男に惚れられたんだろうと若干気が遠くなった。
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