スカーレットの悪女
しかし私が負傷してることによって大希も動揺しているらしい。


非道の覇王なんて巷で恐れられてるくせに、こんな小娘の傷ひとつで平常心を保てないなんて。


しっかりしろよ若頭、と思う反面ほんのちょっぴり嬉しかった。



「ほら赤星、お前実莉に言う事あるやろ」

「反撃お見事でしたよ。実莉さん、ナイスガッツです」

「謝るんちゃうんかーい!」



大希が肘で丞さんを小突くと彼は親指を立てて私を褒める。


彼に否はないはずだから謝れという大希の発言が謎だけど今は流しておこう。


平気なことを示すためになにかアクションを起こさねば。


だけど笑うと口内で歯が傷跡に当たって痛いから、真顔でピースしておいた。



「観念せえ、現行犯や。はよ歩け」



背後では雅が手錠に通した縄を強く引っ張り、意気消沈でふらつく女を誘導している。



「なに泣いてん。ってお前、泣き顔ブスやな」



なかなか進まない女の顔を覗き込んでこれみよがしに罵り、今までの鬱憤を晴らしているようだった。


京都の人間が遠回しではなく直接悪口を言うなんて、よっぽどの恨みを抱いてるんだな。


雅の場合は性格上口が悪いだけかもしれないけど。
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