スカーレットの悪女
男衆は組長を引き連れ撤収し、駐車場に残されたのは私達だけになった。


大希は「ほな俺らも帰ろか」と車に乗り込もうとしたけど、私は大希の服を引っ張って呼び止めた。


あまりにもうまく出来すぎて既視感がある。荒瀬が組織に不必要な連中を追放した手法に酷似している。


あえて私を傷つけさせることで罪を着せて罰したのでは?



「どないしたん、そんな不安そうな顔して」

「ねえ、もしかして……わざと誘い込んだの?」



大希が私のことが好きなことは知っている。


だけど組織のためなら、私が傷ついても構わないっていうの?

きっと大事にならないように影から監視していたんだろうけど、結果的に怪我をしたことは事実だを


志勇なら絶対、壱華が傷つくような作戦は拒絶するのに。


蔑ろにされた気がして、次第に怒りがこみ上げて大希を睨んだ。


するとそれまで黙って私を観察していた大希は、うつむいて口をすぼめ、しょぼくれた老犬みたいな顔になった。


あれ、なにその反応。まるでこっちが被害者ですみたいな態度に私は混乱した。



「実害がないとしょっぴけんからってあの鬼が!俺は絶対嫌やって言うたのに」



あの鬼、と顔をしわくちゃにして言った大希の指先は丞さんを指している。


ということはつまり、この作戦は覇王の右腕、赤星丞が考えたってこと?
< 794 / 807 >

この作品をシェア

pagetop