スカーレットの悪女
「この俺が実莉を駒に使うわけないやろ!疑われて俺めっちゃショックなんやけど。おい赤星、お前のせいで実莉に嫌われたらどうしてくれるん」

「日本の警察だってそうでしょう。実害がなければ誰も動きませんからあえて事件を起こさせたんです」

「ええからはよ謝れや」

「どうも赤鬼です。赤星と赤鬼って韻踏んでるから違和感ないですねえ」



大希が私のことが好きすぎて、組の存続より私の機嫌のほうが気になるらしい。


それはそれでどうかと思うけど、間違いなく大希の愛情は本物のようだ。それを知って安心した。


だけど、作戦を立てた当の本人に反省の色が見えない。


舐められてるのか、私ならこの程度の困難は乗り越えられると思われてるのか。


どちらにせよこんな扱いを受けて気分が悪いのは確かだ。


よし、喧嘩売ってやる。



「もうどっからどう突っこんだらええか分からん」

「じゃあ私が」



大希はため息混じりに匙を投げる。すかさず私が漫才じみた会話に参戦する意思を見せると、ふたりとも目を丸くして私を見つめた。


油断させるため、微笑みながら丞さんの前に立つ。



「少し屈んでくれません?」



怒りをうまく抑え込んでいるから、こんなあからさまな要求も丞さんはすんなり受け入れた。

まったく警戒していない様子を見ると、私のこれからの行動はまったく予想外らしい。


無条件で許してくれると思ってるのかな?


残念ながらそこまで人間できてない。私はやられたらやり返す女だ。


中腰になった彼の顔が近づいてきたのを確認し、その顔めがけてフルスイングでビンタした。


見事平手打ちが頬に当たり、破裂音によく似た大きな音が響き渡った。
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