スカーレットの悪女
そんなことを考えながら夕闇に染まる夏空を眺めていた。


大阪の街並みにも慣れてきたな、東京が恋しいという気持ちは段々薄れてきたような気もする。


景色を眺めていると、本家と反対の方向に進んでいることに気がついた。



「帰るんじゃなかったの?」

「やっぱ実莉は屁でもなかったんやな。あんなことがあっても腹がへるなんて。せやったら先に腹ごしらえしようや」



どうやら男性陣も腹ペコみたいだ。よし今日は外食だ、何食べようかな。



「口の中切れてるからなるべく刺激控えめでよろしく」

「なんやったら食べれそう?」

「……フレンチとか?」

「食い意地張りすぎやろ。なんで口ん中切ってフレンチ食べる気満々なん恐ろしいわ」

「逆だよ、高級フレンチだったら意地でも食べる気になるでしょ」



いろいろ考えた上で案を出したのに雅に怪訝な顔をされた。痛いのは事実だから、それを忘れ
させるほど色に集中しないといけない。


となると創作料理のフレンチだったら見た目も楽しめるから食べる気になりそうだなと思った。



「ならへんわおかゆで我慢せえ」

「えー、そこをなんとか〜!」



雅に向かって手をすりすり合わせておねだり。すると背後から声がした。振り返ると丞さんがどこかに電話をかけているところだった。
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