スカーレットの悪女
「えー、どうしよう選びきれない」


系統の違う2つの赤いドレスを試着した後、実莉は腕を組んでうんうん唸っとる。


個人的に2着目のサテン生地のタイトな感じのドレスが好きやけど、年齢的には最後に着たふわふわのレースの方かな。


ていうか赤色だけやなくてせっかくならいろんな色試したらええのに。



「赤がええの?」

「だって壱華が選んでくれた色だもん」

「ほんまにお姉ちゃん好きやな」


なんの気なしにそう呟くと、実莉はハッとした顔で俺を見つめる。

不安そうな顔してどうしたんやろ。ああ、もしかして皮肉に聞こえた?



「大希は何色が好きなの?」



俺は京都の人間やないなら不服は直接言うけどまあええわ。


俺のこと気にかけてくれてるみたいで嬉しい。


大丈夫やで、実莉がツンデレなのは俺が一番よく分かっとる。


「ねえ、大希聞いてる?」

「聞いとるよ、ピンク着てほしいねんな。普段からあんま着んやろ」



質問に答えると実莉は「ピンクか……」と呟いてまた腕を組む。そういえば私服でもピンクはあまり見たことない。


顔の系統的に絶対似合うのに頑なに着ない。なんでやろ、その色嫌いなん?あんまりいい思い出ないんかな。
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