スカーレットの悪女
「よう話しかけたな、イライラしてんの見て分からん?」


ほら、言うたやん。


声はだいぶ抑え込んではるけど振り返った表情は般若そのもの。俺に向けられた表情やないのに恐怖で鳥肌が立つ。


さすがの実莉もショック受けたやろうな、泣きべそ浮かべてそう。


と思ったけどまさかの無表情。涼しい顔してるやん。ウソやろノーダメージ?ほんま肝座りすぎやろ。


俺でも大希さんにあんな態度取られたら3日引きずるわ。


実莉、この状況どうやって打破するんやろ。


固唾を飲んで見守っていると、実莉はゆっくり首を傾げ、口を開いた。


「大丈夫?おっぱい揉む?」


……おっぱい?


え、いや聞き間違いか。この状況でふざけたこと言うわけないよな。


さすがの大希さんも実莉の言葉が理解できず硬直してはる。


何言ってんねんこいつ。そんな突拍子もないことで気を逸らそうとしたってこのレベルの機嫌が治るわけ──



「あ?……揉む!!!」



ってウソやろ、大希さん凄んだかと思えば光の速さで目の輝き取り戻したやん。


「ええぇ〜〜?」



さすがの俺もびっくりして声を発した。


大希さんは構わず実莉にタックルをかまして近くにあったソファに押し倒し、実莉の胸にダイブして動かんくなった。


マタタビ嗅いだ猫か。威厳もクソもないやん。誰やこの腑抜けた男。
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