スカーレットの悪女
「それで、聞きたいことって何?」



ときめいたけど、相手はヤクザの若頭。


威圧感に慣れないからそろそろ退室してほしい。


そのために自分から発言すると、志勇はなぜか気まずそうに目を逸らした。


え、何その反応。怖いものなんてないはずなのに、どうしてためらってんの?



「……壱華は何が好きなんだ」

「……はぁ?」



志勇の口から予想外の質問が飛び出した。


どういうこと?なんで壱華の好物聞き出そうとしてるの?



「お前が意識不明の間、俺の家で生活させたんだがまるでもぬけの殻だった。
今は会話はできるようになったが、目すら合わせてくれない。
お前が戻ってくるまでに、俺に惚れさせるいい機会と思ったんだが」



あー、なるほど。壱華が一筋縄じゃいかなかったんだ。


志勇は街に出ればすれ違う女が全員振り返るほどの美形だから、女を手懐けるなんて簡単と思っていたんだろう。


けど、ウチの壱華は外見で人を判断しない。
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