スカーレットの悪女
「当たり前でしょ、唯一の家族が死にかけたんだから男に惚れてるヒマなんてない」



それに、この世に残されたたったひとりの家族を亡くすかもしれない状況で、志勇に心を開くはずがない。


壱華からなんでもする、とすがりついていたから心配だったけど、志勇の様子を見ると手を焼いているらしい。


よかった、壱華も極度のシスコンで助かった。



「どうやったら俺のことを見るようになる?」

「……うーん、それはちょっと分からない。私は壱華じゃないから」



確か志勇には、女は掃いて捨てるほど寄ってくるって原作で書かれてた気がする。


つまり、年がら年中モテモテの男なのに、壱華はほかの女と違って懐かなかったわけだ。


闇の帝王と称される志勇が、ひとりの少女に対して真剣に悩んでる。その姿は実に滑稽だった。
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