スカーレットの悪女
「若、そろそろ出発しないと……」



と、その時だった。


病室の扉が開いて、よく通る男の渋い声がした。


そこに立っていたのは、背が高くガタイのいい、眉なしの男。


サイドを刈り上げたオールバックに、一重の鋭い目つき。まさに極道、って感じの強そうな姿。


一般人(カタギ)が見たら震え上がりそうな見た目でも、私にとっては救世主に見えた。


この人も物語の主要人物だ。やっと会えた!



「あっ!|剛(つよし)さんだ!」



志勇が返事をする前に声をかけると、荒瀬兄弟は揃って私をガン見してきた。


だよね、私とこの人に接点があるなんて思ってなかったはず。


剛さんは返事をするか迷ってたみたいだけど、短くため息をついた後、私と顔を合わせた。
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