保健室登校
三年二組の教室はすでに生徒達が登校していた。
深呼吸を二回する。慎介くんと目を合わせて、私は教室に入った。
入った瞬間、雑談をしていた生徒達の会話が一瞬止まる。
私の席は、後ろの方に――あった。
慎介くんも後ろからついてきてくれているらしい。
「あれ、二年の五十嵐くん?」
「あのめちゃくちゃヤンキーで転校させられた人だよね?」
「なんで星野さんがあんなイケメンと一緒にいるの?」
「ていうか、よく教室に来れたよね」
聞きたくない言葉が、嫌でも耳に入ってきて倒れてしまいそうだ。
でも、ここから逃げたらだめだ。
私は椅子に座る。教室をじっと見渡した。
「私、卒業まで教室で授業を受けます。みなさん、またよろしくお願いします」
そう言っては見たが、誰からの返事もなかった。
次に口を開いたのは、アユちゃんと仲が良かった出口さんだった。
「星野さんさー、アユの気持ち考えたことある?」
慎介くんが私の前に立つ。
「……先輩達は、凛の気持ち考えたことあるの?」
浜田さんが割って入ってくる。
「あ、あんたには関係ないでしょ!? 二年のくせに」
「関係あります。凛は俺のなんで。それを傷つけようとする人は……先輩でも容赦しません」
彼が低い声でそう言い放った瞬間、教室中にビリッとした空気が満ちていく。
出口さんは浜田さんの腕を掴んで「ねぇ、もうやめとこう」と相談していた。
「それじゃ、よろしくお願いしますね」
彼はそう言って、私の方に振り向いた。
「また放課後も来るから。なんかあったらすぐに言ってね」
そこには、いつもの優しい慎介くんの笑顔があった。
――ねぇ、『凛は俺のなんで』って言ってくれたよね。それって、私をみんなから守るためだけに、言ってくれてるんだよね? 恥ずかしいけれど、それだけじゃなかったらいいなんて、考えてしまっている自分がいた。
卒業式まで、あと二週間もないけれど……
私は教室に登校することができたのだった。
深呼吸を二回する。慎介くんと目を合わせて、私は教室に入った。
入った瞬間、雑談をしていた生徒達の会話が一瞬止まる。
私の席は、後ろの方に――あった。
慎介くんも後ろからついてきてくれているらしい。
「あれ、二年の五十嵐くん?」
「あのめちゃくちゃヤンキーで転校させられた人だよね?」
「なんで星野さんがあんなイケメンと一緒にいるの?」
「ていうか、よく教室に来れたよね」
聞きたくない言葉が、嫌でも耳に入ってきて倒れてしまいそうだ。
でも、ここから逃げたらだめだ。
私は椅子に座る。教室をじっと見渡した。
「私、卒業まで教室で授業を受けます。みなさん、またよろしくお願いします」
そう言っては見たが、誰からの返事もなかった。
次に口を開いたのは、アユちゃんと仲が良かった出口さんだった。
「星野さんさー、アユの気持ち考えたことある?」
慎介くんが私の前に立つ。
「……先輩達は、凛の気持ち考えたことあるの?」
浜田さんが割って入ってくる。
「あ、あんたには関係ないでしょ!? 二年のくせに」
「関係あります。凛は俺のなんで。それを傷つけようとする人は……先輩でも容赦しません」
彼が低い声でそう言い放った瞬間、教室中にビリッとした空気が満ちていく。
出口さんは浜田さんの腕を掴んで「ねぇ、もうやめとこう」と相談していた。
「それじゃ、よろしくお願いしますね」
彼はそう言って、私の方に振り向いた。
「また放課後も来るから。なんかあったらすぐに言ってね」
そこには、いつもの優しい慎介くんの笑顔があった。
――ねぇ、『凛は俺のなんで』って言ってくれたよね。それって、私をみんなから守るためだけに、言ってくれてるんだよね? 恥ずかしいけれど、それだけじゃなかったらいいなんて、考えてしまっている自分がいた。
卒業式まで、あと二週間もないけれど……
私は教室に登校することができたのだった。