保健室登校

side慎介:ある日の保健室

「……はよっす」

保健室に入ると、クリーム色のカーテンが風に揺れた。
いつもそこにある姿を探すけれど、見当たらない。
星野さん、休んでいるのかな。
残念な気持ちもあるけど、彼女の体の方が心配だ。

あの日、一生懸命俺に手当をしてくれた星野さんの顔を思い出す。
透明感があって、可愛らしくて、どこか儚いような彼女の存在。
保健室の雰囲気も相まって、ときどき彼女が消えてしまいそうな感覚を覚える。

あの日から、トゲがちくりと胸に刺さったまま。俺、星野さんのことが好きなんだ。

点…ふと見ると保健室の隅のベッドはカーテンで閉じられている。生徒が寝ているのかもしれない。もしかしたら……。

そっとカーテンのなかを隙間から覗いてみる。
そこには、頬を桃色に染めた星野さんが眠っていた。

「体調、悪いのかな……」

星野さんを起こすのはさすがにダメだな。
換気のため少し開けられていた窓を閉める。あたたかくしてあげないと。

ゆっくり窓を閉めたけれど、建付けが悪いのかキキィと甲高い金属音が鳴る。

その音で起こしていないか不安になり、もう一度仕切りの隙間から星野さんを覗く。

静かな寝息を立てながら寝ている彼女の可愛らしさに、一瞬理性が外れそうになってしまう。

――かわいすぎるだろ。

彼女はどこか影がある。
俺の手で、星野さんを笑顔にしたい。幸せにしたい。
そう思うのは、俺のワガママなんだろうか。

足音を立てないように保健室をあとにする
保健室を出てすぐに、また彼女に会いたくなってしまう。
そんな自分の気持ちを、いつか彼女に伝えられるだろうか。
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