保健室登校
校門を出ると、少しずつ人もまばらになった。
「五十嵐くんは、帰りこっちなの?」
「ううん、でも近いから」
さりげなく、車道側を歩いてくれている。年下なのに妙に大人びているのは、こんな気づかいができる人だからなのかな。
「昼休みにも言ったけどさ、俺は星野さんなにも悪くないと思ってる」
「ありがとう……」
今まで、そんな言葉をかけてもらったことがなかったので、そう言われるたびにじんわりとしたぬくもりを感じてしまう。
「でさ、教室に戻りたい……とは思わない?」
痛いところを言われてしまった。正直、なんで私が教室で授業を受けられないんだろうと何度も思った。でも、怖かった。
「それは、思うよ。だけどね、またなにかあったらって思うと、怖いの……」
強い風が吹く。もうすぐ春とは思えない冷たい風だった。
五十嵐くんは私の一歩前に出ると、振り向いた。
「なら、俺が一緒に行く。それでも教室が嫌だったら、また保健室に戻ればいい。もうすぐ卒業でしょ? どうせなら、心残りがないようにしようよ」
彼は微笑んだ。明るい髪がキラキラと光を反射している。
彼の周りだけは春がもう来たみたいに暖かくて、やわらかい。
そんな空気に包まれていた。
「……ねぇ、五十嵐くんはなんで私に優しくしてくれるの?」
「……それは、卒業のときにでも言うよ」
彼は意味深に笑うと、また私の歩幅に合わせてゆっくりと歩き始めた。
なぜ五十嵐くんが優しくしてくれるのかはわからない。
だけど勇気が湧いてくる。
「――私、明日教室に行ってみる」
「うん、じゃあ朝待ち合わせしよう」
五十嵐くんはそう言うと、私に小指を向ける。
「約束」
おそるおそる小指を結ぶ。
彼の指先は、あたたかった。
私、このままじゃ五十嵐くんのこと――
「五十嵐くんは、帰りこっちなの?」
「ううん、でも近いから」
さりげなく、車道側を歩いてくれている。年下なのに妙に大人びているのは、こんな気づかいができる人だからなのかな。
「昼休みにも言ったけどさ、俺は星野さんなにも悪くないと思ってる」
「ありがとう……」
今まで、そんな言葉をかけてもらったことがなかったので、そう言われるたびにじんわりとしたぬくもりを感じてしまう。
「でさ、教室に戻りたい……とは思わない?」
痛いところを言われてしまった。正直、なんで私が教室で授業を受けられないんだろうと何度も思った。でも、怖かった。
「それは、思うよ。だけどね、またなにかあったらって思うと、怖いの……」
強い風が吹く。もうすぐ春とは思えない冷たい風だった。
五十嵐くんは私の一歩前に出ると、振り向いた。
「なら、俺が一緒に行く。それでも教室が嫌だったら、また保健室に戻ればいい。もうすぐ卒業でしょ? どうせなら、心残りがないようにしようよ」
彼は微笑んだ。明るい髪がキラキラと光を反射している。
彼の周りだけは春がもう来たみたいに暖かくて、やわらかい。
そんな空気に包まれていた。
「……ねぇ、五十嵐くんはなんで私に優しくしてくれるの?」
「……それは、卒業のときにでも言うよ」
彼は意味深に笑うと、また私の歩幅に合わせてゆっくりと歩き始めた。
なぜ五十嵐くんが優しくしてくれるのかはわからない。
だけど勇気が湧いてくる。
「――私、明日教室に行ってみる」
「うん、じゃあ朝待ち合わせしよう」
五十嵐くんはそう言うと、私に小指を向ける。
「約束」
おそるおそる小指を結ぶ。
彼の指先は、あたたかった。
私、このままじゃ五十嵐くんのこと――