やさしい嘘のその先に
「――それでね、最近何だか律顕の事が嫌で嫌で堪らないの」
「え? それって……早くも離婚の危機ってこと?」
「違う違う。別に嫌いになったわけじゃないの。だけど……何だろう。距離を詰められることに生理的な嫌悪感を覚えてしまうというか」
結局固形物は食べられそうになかった美千花は、アイスクリームを頼んだ。
そんな美千花を気遣って、余り匂いの濃くないもの……と探して頼んでくれたサンドイッチセットからハムサンドを手に取った蝶子を横目にそう付け加えたら、もう一度「えっ」と言われてしまう。
ほんのちょっぴりすくい上げたバニラアイスを口に含もうとしていた美千花は、蝶子の声に思わず動きを止めた。
「それってさ、永田さん――あ、美千花も永田さんか。えっと……旦那さんは怒らないの?」
実は律顕と美千花は社内恋愛の末に結婚したカップルだ。
受付にいた美千花に、営業の律顕が熱烈にアプローチしてゴールインした形。
結婚を機に美千花は仕事を辞めて家庭に入ったけれど、今も変わらず受付嬢を続けている蝶子と、営業として第一線で働いている律顕は、毎日のように会社で顔を合わせる仲だから。
蝶子は友人として付き合っている美千花のことも気にはなるけれど、面識のある律顕に対してもそれなりに同情してしまうらしい。
「え? それって……早くも離婚の危機ってこと?」
「違う違う。別に嫌いになったわけじゃないの。だけど……何だろう。距離を詰められることに生理的な嫌悪感を覚えてしまうというか」
結局固形物は食べられそうになかった美千花は、アイスクリームを頼んだ。
そんな美千花を気遣って、余り匂いの濃くないもの……と探して頼んでくれたサンドイッチセットからハムサンドを手に取った蝶子を横目にそう付け加えたら、もう一度「えっ」と言われてしまう。
ほんのちょっぴりすくい上げたバニラアイスを口に含もうとしていた美千花は、蝶子の声に思わず動きを止めた。
「それってさ、永田さん――あ、美千花も永田さんか。えっと……旦那さんは怒らないの?」
実は律顕と美千花は社内恋愛の末に結婚したカップルだ。
受付にいた美千花に、営業の律顕が熱烈にアプローチしてゴールインした形。
結婚を機に美千花は仕事を辞めて家庭に入ったけれど、今も変わらず受付嬢を続けている蝶子と、営業として第一線で働いている律顕は、毎日のように会社で顔を合わせる仲だから。
蝶子は友人として付き合っている美千花のことも気にはなるけれど、面識のある律顕に対してもそれなりに同情してしまうらしい。