ツインソウル
日差しが強くなってくると着物は暑い。
緋沙子は着物を好んではいるが夏は洋服に限るなと思いながらアロマサロン『涼』に到着した。
「緋沙子さん、おはようございます」
オーナーの涼香は元気よく声を掛けてくる。
「今日は十時からご予約ありますよ。奥田由香里さんって方でアロマのお客さんなんですけどね」
「奥様ですか」
図書を譲ってもらってから奥田智樹と緋沙子は五回ほどロビーで話す機会があった。
たわいもない会話で短時間だったが由香里の登場になんだか緋沙子は後ろ暗い気持ちになってしまった。(なにを相談されるのかしら)
智樹とはどんな関係かと問われると、知人のような友人のような単なる話し相手のような、これだと言い難い関係だ。
男として全く魅力を感じないとは言わないが、どちらかと言うと昔から知ってる従兄のような不思議な感覚だった。
いつの間にか時間が経っていて由香里が現れた。
由香里は明るい紅茶色の柔らかい短めのウェーブヘアで大人と少女の狭間にいるような魅力的な女性だ。(奥田さんの奥さんって可愛い女の人だなあ)
「以前は主人のことを観てもらったんですよね。ある男性とのことで……。主人のことではないんですが」
「なんでも大丈夫ですよ」
(他の男性とのこと……)
「相性とこれからどうなってしまうかが知りたいんです。もっと詳しく話したほうがいいですか?」
「話し辛ければそれで結構ですよ。お互いの生年月日だけ教えてください」
まずは二人の相性を見るためにパソコンにデータを入力しホロスコープという天体の配置図を使ってで相性を見ることにした。
「相性から拝見いたしましたが。うーん。とにかく激しいですね。永遠の恋人ってところでしょうけど反発も強いんです。別れたり離れたりを繰り返しやすい関係で、だけどこの相手以上に強く思える存在はいないかもしれません。若い時に出会うと辛いでしょうね。特に男性のほうが、一般的にもそうですが性欲の強さから、女性関係が派手になりやすいんです。だから一人の人を愛していても欲望に走りやすいので……」
由香里が大きく息を吐き出した。
「まったくおっしゃる通りです。そんなことまでわかるんですね。一度結婚したんですが別れてしまって……。ここ何年も会ってなかったのにこの前、偶然再会しちゃって。それから、そいつのことが頭から離れないんです」
「そうですか……。そういう相性のようですね。少し年齢が経って肉体より精神に意識を持っていけるようになるころに出会えると、とてもいい相性なんですけどね。タロットで今後のことを観てみますね。近未来ですけど」
タロットカードをシャッフルし、一つにまとめて並べていく緋沙子の手つきを由香里は真剣に見つめている。
並べ終わったカードをすべてめくってから緋沙子は話した。
「結論から申しますと、よりが戻るでしょう。しかも反対する人がいません」
「え」
由香里が不安そうな顔をする。
「不思議ですけど、ご主人でさえも応援してくれそうです。しかも同じことの繰り返しのような戻り方ではないです。改めてお互いを成長させた状態で戻れるでしょうね」
「このカードがそうですか?」
天使がラッパを吹いている情景が描かれた『審判』のカードを由香里は指さした。
(奥田さんは納得してるんだ。この人たちの関係)
緋沙子は自分の感想を由香里には告げなかったが、なんとなく納得してタロットカードを眺めた。
この穏やかな表情でカップからカップへ水を注ぐ天使が描かれた『節制』のカードを示すのはおそらく智樹だろう。
「不安だと思いますが一度皆さんで話し合うといいですよ」
「主人との相性も観てもらっていいですか。それと彼と主人も」
「もちろん由香里さんともいい相性ですけど、ご主人と由香里さんは親子のような相性ですね。ご主人と彼はやっぱり親友ですね」
「なんだか、色々納得です」
段々と落ち着いた様子で由香里はリラックスしてきたようだ。
「難しく考えることも焦ることも必要にありませんから」
ふふっと優しく笑って由香里は「主人と同じこと言うのね」と、言って頭を下げ立ち去って行った。
緋沙子は由香里の軽くなった足取りを見送った。
なんとなくカードを手に取り智樹の今後を占い始める。(由香里さんは彼と復縁しそうだけど奥田さんはどうなるのかしら?)
現在の智樹を示すカードはやはり『節制』だ。(すごい人。男の人でこんなカードでるなんて)
緋沙子は自分の知っている男たちは皆良くも悪くも支配欲の強い『皇帝』なので不思議な気持ちになった。
近未来は暗闇を静かに歩くランプを持った老人が描かれた『隠者』だ。(ああ。奥田さんにも出てくるのね。地味な雰囲気だけど)
少し安堵の気持ちが湧いて緋沙子は七十八枚のタロットカードを一つにまとめて手を止めた。
緋沙子は着物を好んではいるが夏は洋服に限るなと思いながらアロマサロン『涼』に到着した。
「緋沙子さん、おはようございます」
オーナーの涼香は元気よく声を掛けてくる。
「今日は十時からご予約ありますよ。奥田由香里さんって方でアロマのお客さんなんですけどね」
「奥様ですか」
図書を譲ってもらってから奥田智樹と緋沙子は五回ほどロビーで話す機会があった。
たわいもない会話で短時間だったが由香里の登場になんだか緋沙子は後ろ暗い気持ちになってしまった。(なにを相談されるのかしら)
智樹とはどんな関係かと問われると、知人のような友人のような単なる話し相手のような、これだと言い難い関係だ。
男として全く魅力を感じないとは言わないが、どちらかと言うと昔から知ってる従兄のような不思議な感覚だった。
いつの間にか時間が経っていて由香里が現れた。
由香里は明るい紅茶色の柔らかい短めのウェーブヘアで大人と少女の狭間にいるような魅力的な女性だ。(奥田さんの奥さんって可愛い女の人だなあ)
「以前は主人のことを観てもらったんですよね。ある男性とのことで……。主人のことではないんですが」
「なんでも大丈夫ですよ」
(他の男性とのこと……)
「相性とこれからどうなってしまうかが知りたいんです。もっと詳しく話したほうがいいですか?」
「話し辛ければそれで結構ですよ。お互いの生年月日だけ教えてください」
まずは二人の相性を見るためにパソコンにデータを入力しホロスコープという天体の配置図を使ってで相性を見ることにした。
「相性から拝見いたしましたが。うーん。とにかく激しいですね。永遠の恋人ってところでしょうけど反発も強いんです。別れたり離れたりを繰り返しやすい関係で、だけどこの相手以上に強く思える存在はいないかもしれません。若い時に出会うと辛いでしょうね。特に男性のほうが、一般的にもそうですが性欲の強さから、女性関係が派手になりやすいんです。だから一人の人を愛していても欲望に走りやすいので……」
由香里が大きく息を吐き出した。
「まったくおっしゃる通りです。そんなことまでわかるんですね。一度結婚したんですが別れてしまって……。ここ何年も会ってなかったのにこの前、偶然再会しちゃって。それから、そいつのことが頭から離れないんです」
「そうですか……。そういう相性のようですね。少し年齢が経って肉体より精神に意識を持っていけるようになるころに出会えると、とてもいい相性なんですけどね。タロットで今後のことを観てみますね。近未来ですけど」
タロットカードをシャッフルし、一つにまとめて並べていく緋沙子の手つきを由香里は真剣に見つめている。
並べ終わったカードをすべてめくってから緋沙子は話した。
「結論から申しますと、よりが戻るでしょう。しかも反対する人がいません」
「え」
由香里が不安そうな顔をする。
「不思議ですけど、ご主人でさえも応援してくれそうです。しかも同じことの繰り返しのような戻り方ではないです。改めてお互いを成長させた状態で戻れるでしょうね」
「このカードがそうですか?」
天使がラッパを吹いている情景が描かれた『審判』のカードを由香里は指さした。
(奥田さんは納得してるんだ。この人たちの関係)
緋沙子は自分の感想を由香里には告げなかったが、なんとなく納得してタロットカードを眺めた。
この穏やかな表情でカップからカップへ水を注ぐ天使が描かれた『節制』のカードを示すのはおそらく智樹だろう。
「不安だと思いますが一度皆さんで話し合うといいですよ」
「主人との相性も観てもらっていいですか。それと彼と主人も」
「もちろん由香里さんともいい相性ですけど、ご主人と由香里さんは親子のような相性ですね。ご主人と彼はやっぱり親友ですね」
「なんだか、色々納得です」
段々と落ち着いた様子で由香里はリラックスしてきたようだ。
「難しく考えることも焦ることも必要にありませんから」
ふふっと優しく笑って由香里は「主人と同じこと言うのね」と、言って頭を下げ立ち去って行った。
緋沙子は由香里の軽くなった足取りを見送った。
なんとなくカードを手に取り智樹の今後を占い始める。(由香里さんは彼と復縁しそうだけど奥田さんはどうなるのかしら?)
現在の智樹を示すカードはやはり『節制』だ。(すごい人。男の人でこんなカードでるなんて)
緋沙子は自分の知っている男たちは皆良くも悪くも支配欲の強い『皇帝』なので不思議な気持ちになった。
近未来は暗闇を静かに歩くランプを持った老人が描かれた『隠者』だ。(ああ。奥田さんにも出てくるのね。地味な雰囲気だけど)
少し安堵の気持ちが湧いて緋沙子は七十八枚のタロットカードを一つにまとめて手を止めた。