具現術師は今日も行く!
 彼は二人に連れられるまま、まだ建てたばかりというまだ何も置かれていない新店までやってきた。

「こじんまりしていてもいいんだ、まずは定食を出す店にしたいと思うんで」

「じゃ、テーブルとイスはね…」

「はいはい」

 彼は二人の注文を懸命に聞きながら店内を眺めてデザインを考え、スケッチに描き出していく。


「ん?なんだよ、このスペース…」

 自分たちの書いた設計図を見直していた勇者が何かを見つけたらしい。

「ああ、そこは俺の画廊」

 魔王は悪びれることもなく、しれっとそう返した。

「…“居候スペース”まで組み込んでやったのに、画廊もかよっ。俺の店なのに…まだ画家の卵だろ」

 勇者は苦笑い。

「まだ俺は学校通いだけど、絵は売りたいから。自分の絵を見てもらう機会がほしいんだ。あんたは近くに妻子もいる家があるじゃん」

 魔王は澄まし顔のままそう言った。

 仲の良さげな二人に悪い気はしなかった。
 今から自分は、この二人の夢の店を作る手伝いをするのだから。

「…いいっすね。いい店に、なると良いですね!」

 彼は愛嬌のある笑顔で言った。

 勇者はニコリと笑い、彼に返す。

「ありがとうございます。…最初の候補地が使えれば、もっと良かったんだけど…」

 その言葉に昼食の準備を始めていた魔王が振り返り、勇者に返した。

「俺の城のこと?あの城は妹がスイーツ店を出すってことで、譲ったんだよ」

「あの城で、スイーツ店!!?」

 勇者は魔王城のあまりの使い道に驚いている。

 仲の良い様子の二人。
 まだしばらく彼らの店の内装を手伝うことになっているのだから、この様子なら気を張らずに済みそうで、話を聞きながらでも大丈夫だろう。
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