Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
 助けて! 誰か助けて!
 口を塞がれていたのは、幸いだったのかもしれない。
 自分を助けに来て、死ぬかもしれない傷を負った青年を無視して、己の身ばかりを優先する私の、その身勝手な悲鳴は、スキルドにはとても聞かせられない。
 そんな悲鳴は天に届くわけもなく、馬は走り出した。
 遥か遠い地を目指して。



 あの時、フェアルス姫達との出会いがなかったら。
 あの時、兄がベスフルの戦いに赴くことがなかったら。
 今も私は、スキルドの隣で、身勝手な自分を自覚せず生き続けていたのだろうか?
 考えずにはいられない。
 このたった1つの偶然は、私の運命を大きく変えてしまったのである。
< 19 / 111 >

この作品をシェア

pagetop