Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
 事情を知ると、彼らはただの恐ろしい侵略者ではなく、私達と変わらない人々なのだと思える。
 父がそうだったのだから、当たり前のことだった。



 大きな金属の門が、音を立てて開かれる。
 門を抜けると、石造りの街があり、住民たちが行き交っていた。
 山の上から見えた巨大な城は、そのまま街も含んでいたのだ。
 街を、丸ごと高い城壁が覆っている。城塞都市と言うらしい。
 大通りの先に、目的の城が見えた。
 街の方は、山で見た集落ほどではないが、こちらもあまり活気がなかった。
 そういえば、レバスの城下町も似たようなものだったか。
 城の前に着くと、馬車を下ろされ、彼の案内に従って、城の扉を潜った。
 扉の左右に立つ衛兵は、ベスフル城の衛兵たちよりも一回り大きい。
 街で見かけた人々も、皆、大柄だったことを考えると、生まれつき私達より大きな体を持っているのだろう。
 父や、目の前を案内する彼は、魔王領の中では小柄な方にあたるようだった。
 城の内装は、華やかだったベスフル城に比べると、どこか冷たく厳格な印象だった。
 階段をいくつか上がり、扉を潜ると、ついに、謁見の間にたどり着いた。
 そこは、ベスフル城のように絨毯などは敷かれていない。
 石の床の上を、彼の後ろをついて歩いた。
 その先には、玉座に腰かけた、魔王の姿があった。
 傍らには、側近と思しき人間が、右に2人、左に1人立って、こちらをじっと睨んでいた。
 魔王自身も、おそらく兄より大柄であったが、そのすぐ右隣に立っている鎧の男は、さらに大きかった。
 側近たちの視線も鋭かったが、それ以上に、魔王の放っている威圧感が、私の心を締め付けていた。
 案内の彼が跪くのを見て、慌てて私もそれに倣う。

「ただいま戻りました」

 震える私とは対照的に、彼は落ち着いた声で言った。

「ご苦労だった。面を上げよ」

 彼と魔王のやり取りなど、まるで頭に入ってこない。
 早く休みたい。ベッドで横になりたい。
 強く、そう思った。

「聞こえているのか。貴様もだ、顔を見せよ!」
「!?」

 自分に言われているのだと気づいて、慌てて顔を上げる。
 魔王がこちらを睨んでいた。
 冷汗が止まらない。とても、まっすぐ視線を合わせられない。

「チェントと言ったな」
「は、はい……」

 震えた声で答える。

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