Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
「なんだよ、そんな睨むなよネモ。ちょっと新入りに、魔王軍の流儀を教えてやってただけだぜ、俺は」
言いながら、彼は足を退けた。
「新人いびりが魔王軍の流儀か? 魔王様には、とても聞かせられないな、ルンフェス」
「裏切り者がどういう目に遭うか、教えてやってただけだろうが!」
ルンフェスと呼ばれた男は、平然と言い返した。
「ネモ、これでも、お前には同情してんだぜ? 自分の親の仇の娘を、面倒見ろなんてよ。魔王様も酷えよな」
親の仇? どういうことだろう?
ルンフェスは、今度は私に向き直って言った。
「知ってるか? お前の親父、スーディが裏切った時、ネモの親は魔王様の護衛隊長だったんだぜ? その時、スーディに殺されたんだよ」
気の毒になあ、と彼は続けた。
「しかもあの時、魔王様が負傷したのは、こいつの親父が不甲斐なかったせいだ、とそんなことを言う心無い奴まで出てきてなあ。死屍に鞭打つって奴か?」
私は、少なからず衝撃を受けていた。
ルンフェスが言ったことが事実なら、私はネモに恨まれても仕方ない。
ここでは、一番身近にいる相手からも疎まれている。
それでは、ここに私の居場所など、あるはずがない。
「ネモ、本当はお前も、こいつを殺したいんだろ? 代わりに俺が、手を汚してやってんだよ」
言いながら、彼は私の肩を蹴った。
「魔王様は、そいつを鍛えることを望んでいる。もし殺せば、お前が罰を受けることになるぞ」
ネモはあくまで冷静に、そう返した。
この人には、そんなに魔王の命令が大事なのだろうか?
憎い相手に無理して向き合わなければ、いけないほどに。
「クールだな、ネモよお……。お前、あんまり調子に乗ってんじゃねえぞ」
それまで、人を小馬鹿にするように喋っていた、ルンフェスの口調が変わった。
「お前が面倒を見た連中が、偶然手柄を立てただけのくせに、勘違いしてんじゃねえよ」
彼が本当に気に入らなかったのは、ネモだった。
私のことなど、実際はどうでも良いのだろう。
この時、初めて気づく。
「その通りだな。あいつらの手柄は、あいつらの努力によるものだ。俺の手柄じゃない」
「スカしてんじゃねえよ! お前自身は弱っちいくせにな!」
ルンフェスは、剣の切っ先をネモに向けた。
「抜けよ。俺が身の程を教えてやる」
言いながら、彼は足を退けた。
「新人いびりが魔王軍の流儀か? 魔王様には、とても聞かせられないな、ルンフェス」
「裏切り者がどういう目に遭うか、教えてやってただけだろうが!」
ルンフェスと呼ばれた男は、平然と言い返した。
「ネモ、これでも、お前には同情してんだぜ? 自分の親の仇の娘を、面倒見ろなんてよ。魔王様も酷えよな」
親の仇? どういうことだろう?
ルンフェスは、今度は私に向き直って言った。
「知ってるか? お前の親父、スーディが裏切った時、ネモの親は魔王様の護衛隊長だったんだぜ? その時、スーディに殺されたんだよ」
気の毒になあ、と彼は続けた。
「しかもあの時、魔王様が負傷したのは、こいつの親父が不甲斐なかったせいだ、とそんなことを言う心無い奴まで出てきてなあ。死屍に鞭打つって奴か?」
私は、少なからず衝撃を受けていた。
ルンフェスが言ったことが事実なら、私はネモに恨まれても仕方ない。
ここでは、一番身近にいる相手からも疎まれている。
それでは、ここに私の居場所など、あるはずがない。
「ネモ、本当はお前も、こいつを殺したいんだろ? 代わりに俺が、手を汚してやってんだよ」
言いながら、彼は私の肩を蹴った。
「魔王様は、そいつを鍛えることを望んでいる。もし殺せば、お前が罰を受けることになるぞ」
ネモはあくまで冷静に、そう返した。
この人には、そんなに魔王の命令が大事なのだろうか?
憎い相手に無理して向き合わなければ、いけないほどに。
「クールだな、ネモよお……。お前、あんまり調子に乗ってんじゃねえぞ」
それまで、人を小馬鹿にするように喋っていた、ルンフェスの口調が変わった。
「お前が面倒を見た連中が、偶然手柄を立てただけのくせに、勘違いしてんじゃねえよ」
彼が本当に気に入らなかったのは、ネモだった。
私のことなど、実際はどうでも良いのだろう。
この時、初めて気づく。
「その通りだな。あいつらの手柄は、あいつらの努力によるものだ。俺の手柄じゃない」
「スカしてんじゃねえよ! お前自身は弱っちいくせにな!」
ルンフェスは、剣の切っ先をネモに向けた。
「抜けよ。俺が身の程を教えてやる」