Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
だが、ネモは剣を抜かない。
「魔王領内での私闘は禁じられている」
気が付けば城内の兵士数人が、何事か、と様子を見ていた。
ルンフェスも、それに気づいて舌打ちすると、剣を収めた。
「腰抜けが、命拾いしたな」
最後にそう言い捨てて、城内へと消えていった。
「立てるか?」
倒れている私に、ネモがそう声をかけてきた。
「……うん」
答えて、ゆっくり体を起こす。
立ち上がる時に、彼は手を貸してくれた。
「その様子なら、歩けるな? 付いてこい、手当てしてやる」
その言葉が思いのほか優しかったので、私は少し面食らった。
ネモは、私を恨んでいるの?
聞きたくて、でも結局聞けないまま、手当ては終わった。
「手当てが済んだら、訓練を再開するぞ」
あんな目に遭ったのに、今日はもう休んでいい、とは言ってくれなかった。
優しさを感じたのは僅かの間だけ、彼はどこまでも厳しい。
やはり、私は恨まれているのかもしれない。そう思った。
実際は、彼は職務と私怨を混同するような人ではないのだが、この時の私はまだそれを知らなかった。
その日も、後に続く訓練は厳しく、疲れ果てた私は、悩むことも忘れて眠りについた。
「魔王領内での私闘は禁じられている」
気が付けば城内の兵士数人が、何事か、と様子を見ていた。
ルンフェスも、それに気づいて舌打ちすると、剣を収めた。
「腰抜けが、命拾いしたな」
最後にそう言い捨てて、城内へと消えていった。
「立てるか?」
倒れている私に、ネモがそう声をかけてきた。
「……うん」
答えて、ゆっくり体を起こす。
立ち上がる時に、彼は手を貸してくれた。
「その様子なら、歩けるな? 付いてこい、手当てしてやる」
その言葉が思いのほか優しかったので、私は少し面食らった。
ネモは、私を恨んでいるの?
聞きたくて、でも結局聞けないまま、手当ては終わった。
「手当てが済んだら、訓練を再開するぞ」
あんな目に遭ったのに、今日はもう休んでいい、とは言ってくれなかった。
優しさを感じたのは僅かの間だけ、彼はどこまでも厳しい。
やはり、私は恨まれているのかもしれない。そう思った。
実際は、彼は職務と私怨を混同するような人ではないのだが、この時の私はまだそれを知らなかった。
その日も、後に続く訓練は厳しく、疲れ果てた私は、悩むことも忘れて眠りについた。