Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
あの時、ネモが私に見せたのは、薄くて丸い木の板の真ん中に、宝石を埋め込んだだけの、盾と呼ぶにはあまりに頼りない代物だった。
それは何もしていなくても、フワフワと宙に浮き、漂っていた。
「この石は、魔王領周辺でもわずかしか取れない、貴重なものだ。向けられる敵意に反応するという特殊な性質を持っている」
彼が私に向かって小石を投げつけてみせると、その盾が間に割って入り、小石を防いだ。
それは不思議な光景だった。
「もちろん、こんな薄っぺらい盾では、敵の槍や剣を防ぐことはできない。そして盾を重くすれば、浮遊石の方がそれを支えられない」
彼が提案したのは、その盾を魔法で鉄より硬く強化して使うということだった。
私が魔力を込めることで、その盾は、赤く輝き、鉄よりも固くなる。
2本の魔法剣を呼び出し、3枚の盾を強化する。
それを同時にこなし続けることは、並の魔力ではできないことらしい。
大した苦労もなく、私はそれをやってみせた。
「俺には、この戦術を考えることはできても、実現はできなかったことだ。自信を持っていいぞ」
興奮気味に言ったネモの言葉を覚えている。
この初陣に私自身、今も恐怖が全くないわけではなかった。
しかし、この盾に守られる安心感。
これだけ周囲を囲まれながら、私は傷一つ負っていない。
浮遊石の盾は、魔法でただ強度を増しただけではなかった。
それだけではこの盾は、向けられる敵意だけを追って、どこまでも漂っていってしまう。
私の周囲に張り付かせ、向けられる攻撃を的確に受け流すには、ある程度、魔法で制御してやる必要があった。
今それを行っているのは、私の後方に控えているネモだった。
「いずれは、盾の制御もお前1人でこなせるようになれ。そうすれば、お前は魔王軍最強の戦士になれる」
それなら、今のままでもいいかな、と私は思っていた。
今の私には、盾の制御と戦闘を同時にこなすだけの技量がない。
だがそうである限り、彼が守ってくれるのだ。
これ以上の安心がどこにある?
20人以上斬ったあたりだろうか?
敵兵の攻撃が疎らになり、明らかに士気が乱れ始めた。
ベスフル軍にしてみれば、敵1人に、何人が斬りかかっても傷一つ負わず、味方が次々と倒れているのだ。
恐怖を覚え、攻撃が鈍るのも、仕方ないことなのかもしれない。
それは何もしていなくても、フワフワと宙に浮き、漂っていた。
「この石は、魔王領周辺でもわずかしか取れない、貴重なものだ。向けられる敵意に反応するという特殊な性質を持っている」
彼が私に向かって小石を投げつけてみせると、その盾が間に割って入り、小石を防いだ。
それは不思議な光景だった。
「もちろん、こんな薄っぺらい盾では、敵の槍や剣を防ぐことはできない。そして盾を重くすれば、浮遊石の方がそれを支えられない」
彼が提案したのは、その盾を魔法で鉄より硬く強化して使うということだった。
私が魔力を込めることで、その盾は、赤く輝き、鉄よりも固くなる。
2本の魔法剣を呼び出し、3枚の盾を強化する。
それを同時にこなし続けることは、並の魔力ではできないことらしい。
大した苦労もなく、私はそれをやってみせた。
「俺には、この戦術を考えることはできても、実現はできなかったことだ。自信を持っていいぞ」
興奮気味に言ったネモの言葉を覚えている。
この初陣に私自身、今も恐怖が全くないわけではなかった。
しかし、この盾に守られる安心感。
これだけ周囲を囲まれながら、私は傷一つ負っていない。
浮遊石の盾は、魔法でただ強度を増しただけではなかった。
それだけではこの盾は、向けられる敵意だけを追って、どこまでも漂っていってしまう。
私の周囲に張り付かせ、向けられる攻撃を的確に受け流すには、ある程度、魔法で制御してやる必要があった。
今それを行っているのは、私の後方に控えているネモだった。
「いずれは、盾の制御もお前1人でこなせるようになれ。そうすれば、お前は魔王軍最強の戦士になれる」
それなら、今のままでもいいかな、と私は思っていた。
今の私には、盾の制御と戦闘を同時にこなすだけの技量がない。
だがそうである限り、彼が守ってくれるのだ。
これ以上の安心がどこにある?
20人以上斬ったあたりだろうか?
敵兵の攻撃が疎らになり、明らかに士気が乱れ始めた。
ベスフル軍にしてみれば、敵1人に、何人が斬りかかっても傷一つ負わず、味方が次々と倒れているのだ。
恐怖を覚え、攻撃が鈍るのも、仕方ないことなのかもしれない。